世界から少しずれた誰かの、声にならない叫び。ささやかな祈り

故郷へのカウントダウン 17 星の息吹

故郷へのカウントダウン 17 星の息吹

17 星の息吹

 アキュラの朝はいつも爽やかだ。

 今朝も美しい太陽の光で目を覚ました。

 子供たちは船の外で元気に遊んでいた。

 レオはパソコンを村に持ち込み、景色を眺め、アキュラの未知の地を探索する計画を立てていた。

 彼は手話に興味を持ち、ユキオに教えてもらっていた。

 ユキオはアキュラのろう者たちにも手話を教えることになり、村で手話教室を開いていた。

 レオは手話をすぐに覚え、ろう者たちと仲良くなった。

 手話を大切な対話手段にし、ろう者たちにも積極的に手話を教えていく姿勢もうかがえた。

 そんなレオの様子を見ながら、脇田はこのところ、ユキオの周りをタクバがうろうろしていることに気づいていた。

 手話教室を遠くから眺めていたかと思えば、ユキオが村を歩いていると、いつの間にかその後ろをついて歩いている。

「おまえ、ユキオに何か用があるのか?」

 脇田が聞くと、タクバは首を振った。

「別に」

 そう言って逃げてしまう。

 何なんだろう、と脇田は思っていた。

 ある日、タクバが一人の女の子を連れてきた。

 脇田よりずっと小さな、タクバによく似た女の子だった。

「姉さんなんだ」

 タクバは少し照れたように言った。

 女の子は何も言わなかった。ただ、村人たちと手で話しているユキオを、じっと見つめていた。

 その顔を見て、脇田はようやく思い出した。

 ――あれならオラの姉さんもさぁ……。

「ああ……そういうことだったのか」

 タクバは脇田を見上げた。

「姉さん、耳が聞こえないんだ」

 やがてユキオが二人に気づいた。

 タクバは姉の背中を押した。

 女の子はためらいながらユキオの前まで歩いていった。

 ユキオは笑って、ゆっくりと手を動かした。

 女の子はその手をじっと見つめていた。

 

 夜になると、子供たちは国連宇宙船のエンジニア室で寝ることにした。

 そこにはたくさんの機械やパーツがあって、子供たちにとっては夢のような場所だった。

 脇田は座席の三つを使ってベッドを作り、毛布にくるまって眠っていた。

 彼は朝が苦手で、マリコたちに起こされてもなかなか起きなかった。

 特にマリコは彼に怒っていて、「役立たず」と叱責するのだった。

 脇田はマリコの顔を見たくないので、X50の裏側に行った。

 そこにはパイロットの妻由里子がいた。彼女は子供たちに囲まれ遊んでいた。

 脇田もそこに行き、彼女と少し話をした。彼女は夫であるレイが作った木のベンチや花壇を見せてくれた。

 レイはとても器用だったが、地球に帰りたくないと思っていた。

 彼は今、食料を探しに海に行っていた。

 彼には地球に残した男の子がいた。由里子は彼のことを心配していた。

 遠くからマリコが脇田を呼んだ。

 彼は返事したが、はっきりと声が聞こえなかった。

 何かの音がうるさくて、耳触りだった。

 近所に滝があるのだ、と由里子は言った。

 由里子は子供たちに、滝を見に行こうと言った。

 脇田は彼女と子供たちについて行き、近くにある土手を登った。すると、本当に滝があった。

 水がドーンと落ちて、白い霧が立ち上っていた。

 脇田は滝を見上げた。空から水が降ってくるみたいだった。

 彼は星の息吹を感じた。

  

つづく

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